その問題は、本当にロボットで解決するべきものか

疑問

ロボットを導入したいけど、どうやって考えていったらいいんだろう?
ロボットの方が作業が速そう。タクトタイムをあげられるんじゃないかな。

杉山

確かにロボット導入をすることで、タクトタイムが速くなることもありますが、工程によっては、実現が難しい場合もあります。事例をあげて考えていきましょう。

今回取り上げるのは、(キッチンなどの)木製家具の部品を加工している会社の事例です。ワーク数は、3万種類以上あり、リピートのワークは、毎月300種類扱うイメージです。少品種大量生産ではなく、多品種少量生産で、人数は100名以下の規模です。省人化を目的にロボットSIerに相談されていました。 予算やタクトタイムなど、高い水準で要求したところ、 途中で連絡が来なくなってしまったため、ご相談をいただきました。

自動化を検討された背景は、人材不足と工場の拡張です。
①人が辞めてしまう。さらに新たに人材を獲得できないため、恒常的に人手が不足している。
②今後、工場を拡張する際に自動化ノウハウを今のうちに蓄積しておきたい。

ロボット導入で大切なことは、全体工程の洗い出しです。まずは実際に工場へ伺い、ワークを入荷してから、出荷するまでの工程を一通り視察しました。全体を視察する中で、ある機械設備の人手が不足している部分がありました。供給と排出をひとりで行っており、排出作業をしていると、供給が止まってしまうという状況でした。

問題を特定した後、社長へ再度ヒアリングを実施しました。相談の背景に加え、満たしたい要件がないか確認するためです。 自動化で外したくない要望は3点ありました。①生産スピード(タクトタイム)を向上させること、②予算を300万円で抑えるということ③保守メンテナンス対応の柔軟さでした。

満たしたい要件を踏まえて、自動化の対象となる機械設備の供給に絞って、提案をさせていただきました。

今回の提案は、ロボットによる自動化ではなく、シンプルなワーク供給システムをご提案しました。低コストで、省人化及び生産量の増加を実現できます。わざわざロボットを使わなくても、目的を達成できます。

ヒアリングをさせていただく中で、感じたことですが、こういった事象は、ユーザー(ロボットを導入する)側と ロボットSIer ( 自動化を支援する )側それぞれに問題が生じていていました。

ユーザー側
  • ロボットは、自動化において万能である(導入すれば、タクトタイムが速くなる)
  • ロボットは、300万円で導入できる(システムや周辺設備を考慮せず単体で計算)

ロボット導入に関しては、産業用ロボットと協働ロボットと2つのロボットが考えられます。産業用ロボットは多目的な用途に適応するためのマニピュレータ(機械の腕)と、プログラムで制御する複数の軸(人間でいう関節)で形成されています。 人の作業とは分離して安全柵で囲んで設置する必要があり、広いスペースや設置費用が必要です。
2013年の労働安全衛生規則の改定により、安全柵なしでロボットを設置することが可能になりました。これに加えてロボット技術の進歩により、本体に安全センサーを組み込むなど人に対する安全性を確保できるようになったことから、限られたスペースでも人と協働した作業ができる協働ロボットの開発が進んできました。今では、多くのメーカーから協働ロボットが販売されています。
産業用ロボットを導入するとスペースが必要になりますが、今回の生産現場では、十分なスペースが確保されていないため、導入が難しい状況でした。一方で、協働ロボットは、 名前の通り、人と作業することを目的につくられたロボットで、人に接触した際にケガをしないようにとスピードが制限されています。 供給スピードに制限があるため、要求を満たすことができませんでした。

ロボットSIer側
  • 解決策が、ロボットのできる範囲でしか考えられない

ロボットSIerは、会社によっては、ロボットありきの提案になることがあります。本来であれば、他の機械装置で解決できることもあります。場合によっては、機械を導入せずとも、工程を少し見直すだけで生産性が向上することがあります。相談するロボットSIerがどんな出自の会社なのか理解したうえで相談することが大切です。

ワーク供給システムは、タクトタイムやコストなどを考慮すると、ロボットを導入するよりもよいソリューションになりました。また要望のひとつにあった保守メンテナンスですが、ユーザー近くの機械設計会社と連携し、安心して稼働させる体制を構築しました。繰り返しになりますが、自動化するためにロボットを活用することもひとつの手段ですが、ロボットありきではなく、実現したいことに焦点を合わせて方法を検討することが重要です。