この記事では、生産性を高める工学的な手法インダストリアル・エンジニアリングについてまとめています。生産性向上のために、課題発見の視点を得ることができます。

インダストリアル・エンジニアリングとは

生産性を向上させるための工学的な手法の体系にインダストリアル・エンジニアリング(Industrial Engineering=IE)があります。IEは、日本語では経営工学や生産工学、管理工学などと呼ばれています。

IEは米国で生まれたテイラーの科学的管理法などが基になって発展してきました。テイラーの科学的管理法では、それまでの成行管理に代えて、課業に基づいた課業管理を行うことで、生産現場に近代化をもたらしました。現在のIEは、これらをさらに発展させ、作業方法を最適化したり、作業効率を高めるためのさまざまな手法から構成されています。

IEは、ワーク(製品)だけではなく、人や物、設備、情報などを含めたシステム全体を対象にしています。経営目的を達成するために、システム全体を最適に設計・改善・運用していく手法です。

IEの全体像

IEには、長い歴史があり、さまざまな手法があります。全体的な体系を押さえることで理解が深まります。大きく分けると、方法研究と作業測定から構成されます。方法研究は、作業の方法を最適化する手法です。作業測定は、作業効率を測定し、標準時間を設定するための手法です。

方法研究はさらに、工程分析と動作研究に分けられます。工程分析は、製品を生産したり、運搬する工程を分析する手法です。動作研究は、より細かく作業者の動作を分析し、最適な作業方法を求めるための手法です。

また作業測定は、稼働分析と時間研究から構成されます。稼働分析は、作業者や機械の稼働を分析する手法です。時間研究は、作業の標準時間を設定するための手法です。

コンテンツが多いため、この記事では、工程分析までを記載しています。運搬分析(工程分析の一部)や動作研究、稼働分析、時間研究については、別記事を用意しています。

工程分析

工程分析は、製品を生産したり、運搬する工程を分析する手法です。工程分析を行うことで、工程の流れや問題点が明確になります。これにより、工程の改善を行ったり、最適なレイアウトの設計を行うことができます。

工程分析には、大きく、製品や作業者の工程分析と、運搬の分析があります。工程分析では、作業や物の流れを表すために、工程図記号を使って工程図を作成します。この工程図はプロセスチャートと呼ばれることもあります。

工程図記号

工程図記号は、一般にJISで定められているものを使用します。図の工程図記号を見ながら、記号の意味を確認していきましょう。

「加工」は「○」で表されます。加工は、元の原材料や部品の、形状や性質に変化を与えることです。例えば材料を切断したり、洗浄したり、部品を組み立てたり、塗装するようなことが加工になります。

「運搬」は「o」か「⇒」で表されます。運搬は、物の位置を変えることを表します。例えば、材料をフォークリフトで運んだり、部品を手で機械に配置したり、製品をコンベヤで移動するようなことが運搬になります。

「停滞」には2つの種類があります。1つは「貯蔵」です。貯蔵は「▽」で表されます。貯蔵は、物を計画的に蓄えている状態です。例えば、材料を材料倉庫に蓄えたり、仕掛品を仕掛置き場に一時的に蓄えたり、完成品を製品倉庫に蓄えているようなことが貯蔵になります。

「停滞」のもう1つは「滞留」です。対流は「D」で表されます。滞留は、物が計画に反して滞っていることです。例えば、ある工程の前で、計画に反して仕掛品が滞っているようなことが滞留になります。

「検査」にも2つの種類があります。「数量検査」は、物の量や個数を測定することです。数量検査は「□」で表されます。例えば、完成品の数量を測定して、問題がないかを確認するようなことが数量検査になります。

「品質検査」は、物の品質特性を検査することです。品質検査は「◇」で表されます。例えば、完成品の品質を検査し、不良品を取り除くようなことが品質検査になります。

また、2つの作業を1つの工程で同時に行う場合には、複合記号で表すことができます。この場合は、主となる作業を外側に書き、従属する作業を内側に置きます。

例えば、品質検査を主として行いながら、数量検査も同時に行う場合は、品質検査の「◇」を外側に書き、数量検査の「□」をその内側に記入します。

工程図記号

単純工程分析

単純工程分析は、オペレーション・プロセス・チャートと呼ばれることもあります。

単純工程分析は、原材料や部品が投入され、加工される過程を表したものです。単純工程分析には、図のように運搬や貯蔵、滞留は記入せず、加工と検査のみを表します。そのため、加工の流れが単純に表現できます。

単純工程分析は、原材料からの加工プロセスの全体の流れをつかみやすいという特徴があります。そのため、工場レイアウト設計や、詳細な工程分析を行う前の基礎資料として利用されます。

単純工程分析

製品工程分析

製品工程分析は、フロー・プロセス・チャートと呼ばれることもあります。

製品工程分析では、製品が加工される流れを、運搬、検査、停滞を含めて表します。製品工程分析では、図のように、工程ごとに、作業の種類を表す工程図記号を線で結んでいきます。こうすることにより、線の場所によって、どこに問題があるのかが一目でわかります。

例えば、下から2番目の工程では、パレットの上で滞留しているため、工程図記号の「滞留」の所に線があります。これは、付加価値を生んでおらず、改善すべき部分になります。

製品加工分析

流れ線図

流れ線図は、工場などのレイアウト図の上に、工程図記号を記入することで、工程の流れを表すものです。流れ線図は、フロー・ダイアグラムと呼ばれることもあります。また、流れ線図を使って、工程の流れを分析することを、流れ分析と呼びます。

流れ線図は、図のように、機械・設備の配置と物の動きを具体的に表すことができるため、レイアウトの設計や工程の流れの改善などによく使われます。

流れ線図

作業者工程分析

作業者工程分析は、作業者の作業を中心に分析するものです。作業者工程分析では、図のように、加工、移動、手持ち、検査について、工程図記号で表します。工程図記号は製品工程分析で使用するものと同様です。

作業者工程分析は、作業手順や作業の無駄の改善などに利用されます。

作業者工程分析

フロムツーチャート

フロムツーチャートは、工程間の物の流れを分析する手法です。フロムツーチャートは、流入流出図表とも呼ばれます。フロムツーチャートでは、各工程の間でどれぐらいの物量が流れているかを分析することができます。

フロムツーチャートでは、まず図のように、縦と横に工程を取った表を作成します。縦は、FROMである前工程、横はTOである後工程を表します。そしてFROMからTOの工程に流れた、運搬重量、もしくは移動距離をマスに記入します。

図の例では、工程Aから工程Bに20の物量が流れています。また、工程Bから工程Cには35、工程Cから工程Dには25の物量が流れています。このように、前から順に流れるものを正流と呼びます。

さらに例では、工程Dから工程Aには10の物量が流れています。このように、後から逆に流れるものを逆流と呼びます。

フロムツーチャートは、多品種の製品で、それぞれの加工経路が異なる場合でも表現することができます。よって、多品種少量生産の工程の分析や、工場レイアウトの設計に用いられる手法です。

フロムツーチャート

工程分析による改善

実際に工程分析を行う際には、最初に分析の目的を明確にすることが重要です。例えば、レイアウトを改善したいのか、作業方法を改善したいのかなどの目的によって、分析の手法や範囲が変わってきます。

また工程分析を基に、改善をする場合には、付加価値を生んでいない作業をいかに削減していくかが重要です。ここでは、ECRSの原則を用いることで、改善のヒントが得られます。

例えば、停滞に関しては、無駄が生じていますので、ラインバランシングを行ったり、段取り替えの改善をすることで、停滞を減らすことが重要です。

運搬に関しては、距離や回数を削減したり、運搬をより自動化することが考えられます。

検査に関しては、必要ない検査を減らしたり、加工と同時に検査をしたり、検査自体の効率を上げることが考えられます。