この記事では、運搬分析(工程分析の一部)と動作研究、稼働分析、時間研究についてまとめています。前記事に続き、生産性向上のために、課題発見の視点を得ることができます。

インダストリアル・エンジニアリング 全体像

運搬分析

運搬分析では、物の移動や運搬を分析します。運搬自体は、付加価値を生んでいないため、できるだけ削減したり、効率化することが重要です。

マテリアルハンドリング

また、物の運搬や取り扱いのことを、マテリアルハンドリング、略してマテハンと呼びます。一般的に、マテハンは、輸送機械や自動化装置を指す場合が多いですが、こういった運搬に関して自動化することで運搬を効率化することができます。

運搬工程分析

主な運搬分析の手法として、運搬工程分析、運搬活性分析、空運搬分析があります。

最初に、運搬工程分析から見ていきましょう。

運搬工程分析は、物が運搬される工程を、運搬工程分析記号で表すことで、運搬の問題点などを分析する手法です。製品工程分析では、製品の加工を中心に分析しましたが、運搬工程分析では物の移動を中心に分析します。

運搬工程分析記号

運搬工程分析記号は、運搬の工程を表すための記号です。この記号は、製品工程分析とは異なります。図を見ながら運搬工程分析記号をざっと見ていきましょう。運搬工程分析記号は、基本記号と台記号があります。基本記号は、工程図記号のように、作業の種類を表します。台記号は、運搬の状態を表します。

基本記号には、移動、取り扱い、加工、停滞があります。

移動は物の位置が移動することです。取り扱いは、物の支持方法が変化することです。例えば、物を床に下ろしたり、台車の上に置くようなことが取り扱いになります。加工は、工程図記号の加工と検査を表します。停滞は、物や位置に変化が起こらないことを表します。

台記号は、物がおかれた状態を表します。物が置かれた状態によって、運びやすさが変わってきます。

台記号には、平(ひら)、箱、枕、台車、コンベアがあります。

平は、物が床や台の上に平置きされている状態です。この場合は、物を運ぶ場合は、一旦物をまとめてから持ち上げて運ぶ必要があるため、最も手間がかかる置き方になります。

箱は、物がコンテナや箱にまとめられた状態を表します。箱の場合は、移動する場合に、物をまとめる手順が必要ないため、平よりは楽になります。

枕は、物がパレットなどに載せられた状態を表します。車の場合は、枕に比べて持ち上げるという動作をしなくて済むため、より運搬が効率的になります。

コンベアは、物がコンベアで移動している状態を表します。コンベアの場合は、すでに物が移動しているため、最も運搬の手間が少ない状態です。

運搬工程分析記号

運搬工程分析の種類

運搬分析では、このような運搬分析記号を使って物の移動を表現します。分析手法として、直線式運搬工程分析と、配置式運搬工程分析があります。

直線式運搬工程分析は、製品工程分析のように、直線的に運搬の流れを記号で表します。この方法では、運搬の流れや問題点を分析することができます。

配置式運搬工程分析は、流れ線図のように、レイアウト図の上に運搬工程記号を記入することで、運搬の流れを分析するものです。この方法は、レうアウトや運搬距離などの問題点が視覚的にわかりやすいという特徴があります。

運搬活性分析

運搬活性分析は、どれくらい運搬がしやすい状態になっているかを明らかにするための分析です。運搬活性とは、運搬のしやすさを表します。

活性示数

運搬活性分析では、運搬のしやすさを表す数値として活性示数を使用します。活性示数は、0から4の間の数値を取ります。これは、物を移動するときに、すでに省かれている手間の数を表します。この手間の種類は、まとめる、起こす、持ち上げる、持っていく、ということです。

床にバラ置きしてあるものを運搬する場合には、この4つの手間が全て必要にあります。よって活性示数は0となります。

既に箱に入っているものは、まとめるという手順を省くことができます。よって、活性示数は1となります。

既にパレットに載っているものは、まとめるという手順を省くことができます。よって、活性示数は2となります。

既に台車などに載せられているものは、さらに、持ち上げるという手順を省くことができます。この場合は、活性示数は最も大きい4となります。

既にコンベアで動いているものは、さらに、持っていくという手順を省くことができます。この場合は、活性指数は最も大きい4となります。

このように活性指数は大きい方が効率的に運搬している状態となります。

運搬活性分析図

この活性示数を使って運搬の工程を表したのが、運搬活性分析図です。運搬活性分析図では、図のように、運搬の工程ごとの活性示数をグラフで表します。これにより、運搬活性が低い工程が一目でわかります。

運搬活性が低い工程は、運搬活性を上げることを検討します。例えば、床にバラ置きする代わりに、箱に入れたり、パレットに載せることで運搬活性を向上させることができます。

運搬活性分析

平均活性示数

工程全体の平均活性示数は次の式で求められます。上の運搬活性分析の図の例では、活性示数の合計が13、工程数が6ですので、平均活性示数は約2.2となります。

平均活性示数 式

平均活性示数を計算することにより、ライン間で運搬活性を比較したり、運搬の改善前と改善後を比較することができます。

空運搬分析

空運搬は、物の移動を伴わずに、人や運搬機器のみが移動することを指します。空運搬は、付加価値を生んでないため、削減することが重要です。

空運搬分析では、空運搬の割合を表すために、空運搬係数を計算します。空運搬係数は、下記の式で計算できます。

空運搬係数 式

空運搬係数は、できるだけ小さくすることが重要です。そのためには、人のみの移動を少なくする必要があります。

動作研究

動作研究は、作業者の動作を詳細に分析し、最適な作業方法を求めるための手法の体系です。動作研究は、作業者の無駄な動きをなくしたり、最適な動作を検討することが狙いです。

動作研究には、さまざまな手法があります。ここでは、代表的なものを見ていきます。

サーブリッグ分析

サーブリック分析は、ギルブレスという人が開発した、微動作を分析するための手法です。サーブリック(Therblig)は、ギルブレス(Gilbreath)を反対から読んだ名称です。

サーブリック分析では、作業者の動作を、18の基本動作に分解して分析します。この18の基本動作のことをサーブリッグ(動素)と呼んでいます。

18の基本動作は、大きく3つに分類できます。第1類は、主に上半身を使って行う作業で、作業の基本となる動作です。第1類にはつかむ、運ぶ、組み合すなど8つの動作が含まれます。第2類は、主に感覚器官や頭脳で行う動作で、作業を遅らせる動作です。第2類には、探す、選ぶ、考えるなど6つの動作が含まれます。第3類は、作業に必要のない動作です。第3類には、休むや遅れなど4つの動作が含まれます。

サーブリック分析では、あらゆる作業を、18の基本動作に分解します。そして、第2類や第3類の動作をできるだけ排除し、第1類の動作を改善していきます。

両手動作分析

両手動作分析は、作業者の両手の動作を分析するものです。両手動作分析では、動作プロセスごとの左手と右手の動きを、工程図記号などを使って表していきます。両手動作分析では、左右のバランスを取ったり、無駄な動きを排除することが狙いです。

VTR分析

VTR分析は、名前の通り、作業をビデオなどで撮影し、再生することで作業の分析を行う手法です。VTRでは、スロー再生やコマ送りなどができるため、動作を細かく分析し、改善することができます。

メモモーション分析

作業を撮影する方法として、メモモーション分析と、マイクロモーション分析があります。メモモーション分析は、通常よりも遅いスピードで撮影し、短時間で再生する方法です。例えば、1秒間に1コマのスピードで撮影すると、再生する際には、早回しのように高速に再生されます。早いスピードで再生することで、ゆっくり再生すると気がつかない無駄な動きなどを分析するのが狙いです。

マイクロモーション分析

マイクロモーション分析は、メモモーション分析とは逆に、通常よりも早いスピードで撮影し、長時間をかけて再生する方法です。この方法では、再生する際にはスロー再生のようにゆっくり再生されます。遅いスピードで再生することで、細かい動作を分析するのが狙いです。

連合作業分析

連合作業分析は、作業者と機械という組み合わせや、2人以上の作業者の組み合わせによる連合作業を分析する手法です。特に、作業者と機械の連合作業を分析する手法をマン・マシンチャート分析と呼びます。

マン・マシンチャートでは、作業者と機械の動作を時系列に記録していきます。例えば、機械が稼働している間、作業者に手持ちが発生している場合は、作業順序などを変更したり、作業者の受け持つ機械の台数を変更することで、手持ちを削減することを検討します。

マン・マシンチャートの例

動作経済の原則

ここまで、さまざまな作業の分析手法を見てきましたが、人間が作業をする際には、できるだけ自然な動きを使って仕事をすることが重要です。グルブレスは動作経済の原則を提唱しました。

動作経済の原則は、疲労を少なくして、できるだけ少ないエネルギーで楽に作業をするための原則です。動作経済の原則には、さまざまなものがあります。ここでは、代表的なものを紹介しておきます。

まず、身体の仕様に関しては、できるだけ両手を同時かつ左右対称に使うこと、できるだけ小さい動作で仕事をすること、できるだけ重力や慣性などを利用すること、自然な姿勢でリズムよく作業することなどです。

また作業場の配置に関しては、物は手の届く範囲で体の前方に配置すること、作業台やいすは正しい姿勢が取れるようにすることなどです。

また作業台の配置に関しては、物は手の届く範囲で体の前方に配置すること、作業台や椅子は正しい姿勢が取れるようにすることなどです。

また工具や設備については、手で保持する代わりに工具などで保持すること、使いやすい専用の工具を使用することなどです。

動作経済の原則では、楽に作業ができることが重要です。

稼働分析

作業測定は、作業効率を測定し標準時間を設定するための手法の体系です。作業測定は、稼働分析と時間研究から構成されます。稼働分析は、作業者や機械の作業効率や無駄な稼働を分析する手法です。時間研究は、作業の標準時間を設定するための手法です。これにより、作業を効率化していくことが狙いです。

稼働率

稼働分析では、作業の効率を分析します。作業の効率は、稼働率で求めることができます。稼働率は下記の式で求めることができます。

稼働率 = 実際稼働時間 ÷ 総時間

実際稼働時間は、作業を実際に行っている時間です。現実の作業では、作業を行っていない非稼働の時間が存在します。こういった非稼働の時間は付加価値を生まないため、非稼働の時間を減らし、稼働率を維持することが重要です。実際の作業において、どれぐらいの稼働率かを調査する方法には、大きく2種類あります。それはワークサンプリングと連続観測方です。

ワークサンプリング

ワークサンプリングは、作業を瞬間的に観測して、稼働状況を統計的に求める方法です。この方法では、時々観測を行い、その時の作業内容を記録します。そして、最後に集計をすることで稼働内容や稼働率の分析を行います。

例えば、ワークサンプリングで、ある作業者を100回観測した場合に、95回が稼働しており、残りの5回が手持ちや休憩などの作業余裕だった場合は、稼働率は95%になります。

ワークサンプリングのメリットは、少ない労力で観測できることと、1人の観測者で多くの観測対象の観測ができること、作業者が観測されることを意識しないため偏りがすくな データが取れることです。

ワークサンプリングのデメリットは、瞬間的な観測のため深い分析に不向きなこと、サンプル数が少ない場合に誤差が大きくなることです。

時間研究

時間研究は、作業を分解し、各作業の標準時間を設定するための手法です。標準時間を設定することで、作業時間の計画や、統制を適切に行っていくことができます。

標準時間

標準時間は、ある作業単位を行うための標準な時間です。では、標準的な時間とはどのような時間でしょうか。

標準時間の定義には、4つの条件があります。それは、習熟した作業者であること、適切な所定の作業条件の元であること、必要な余裕を持つこと、正常な無理のないペースで作業することです。この4つの条件を満たしたうえで、作業にかかる時間が標準時間となります。

標準時間は、主体作業時間と準備段取作業時間から構成されます。さらに、それぞれは賞味時間と余裕時間から構成されます。

準備段階取作業時間は、ロットごと、もしくは始業や終業時に発生する、準備や段取、後始末などの時間です。主体作業時間は、ロットの間の主体となる作業時間です。つまり、材料を加工したり、部品を組み立てる時間が主体作業時間となります。

賞味時間は、主体作業と準備段取作業を遂行するために必要な時間です。

余裕時間は、さまざまな理由で発生する遅れの時間です。余裕は、さらに管理余裕と、人的余裕に分類されます。管理余裕は、機械を調整したり、打ち合わせをするなど、作業の管理に必要な余裕です。人的余裕は、休憩やトイレに行くなど人間的な要素で必要な要素です。

標準時間を設定するには、作業時間などで時間を測定した上で、賞味時間と余裕時間を合計する必要があります。このとき、余裕率とレイティングという考え方を用います。

作業構成と標準時間構成

余裕率

余裕率は、標準時間もしくは賞味時間に占める、余裕時間の割合です。この余裕率を使って、測定した賞味時間から余裕時間と標準時間を求めます。

余裕率には、2つの計算方法があります。それは、外掛け法と、打掛け法です。外掛け法による余裕率は、賞味時間に対する余裕時間の割合です。余裕率を求める式は、下記の通りです。

余裕率 = 余裕時間 ÷ 賞味時間

外掛け法による余裕率を使って、標準時間を求めるには、下記のようになります。

標準時間 = 賞味時間 × ( 1 + 余裕率 )

一方、内掛け法による余裕率の式は、標準時間に対する余裕時間の割合です。余裕率を求める式は、下記のようになります。

余裕率 = 余裕時間 ÷ 標準時間 = 余裕時間 ÷ ( 賞味時間 + 余裕時間 )

内掛け法による余裕率を使って、標準時間を求めるには、下記のようになります。

標準時間 = 賞味時間 ÷ ( 1 - 余裕率 )

余裕率の計算

レイティング

レイティングは、実際に観測した作業時間を、賞味時間に修正することです。例えば、非常に作業が早い作業者を基に賞味時間を設定すると、標準作業時間としては不適切になってしまいます。この場合は、標準的な作業者の時間に修正する必要があります。これがレイティングです。

レイティングでは、レイティング係数という数値を使って時間の調整を行います。レイティング係数は、基準とする作業ペースが100%とした場合の、その作業者の作業ペースです。その作業者のペースが基準よりも早い場合は、レイティング係数は100%おりも大きくなります。

このレイティング係数を使うと、賞味時間は次のように計算できます。

賞味時間 = 観測時間の代表値 × レイティング係数

例えば、ある作業者で観測したときの観測時間が100秒だったとします。この作業者は、とても作業が早くレイティング係数は120%です。この時の、賞味時間は100秒に120%をかけて、120秒になります。

このように、標準時間の設定では、観測時間からレイティングで調整することで、賞味時間を求めます。次に、賞味時間から余裕率を考慮して標準時間を設定します。これを図のように、主体作業時間と準備段取作業時間について行い、作業全体の標準時間を求めることができます。

標準時間の設定法

標準時間の設定方法

基本的な標準時間の設定法を見てきました。実際にはさまざまな標準時間の設定法があります。主な手法としては、ストップウォッチ法、実績資料法、標準時間資料法、PTS 法などがあります。

ストップウォッチ法

ストップウォッチ法は、作業の要素ごとにストップウォッチで時間を測定し、レイティングを行って標準時間を設定する方法です。また余裕率については、ワークサンプリング法などで求めます。

ストップウォッチ法は、作業の要素ごとにストップウォッチで時間を測定し、レイティングを行って標準時間を設定する方法です。また余裕率については、ワークサンプリング法などで求めます。

実績資料法

実績資料法は、過去の作業日報などから標準時間を見積もる方法です。この方法は、新たに測定の必要がないため手間があまりかからないメリットはありますが、精度が低いというデメリットがあります。

標準時間資料法

標準時間資料法は、直接時間を観測せずに、あらかじめ用意しておいた作業要素別の標準時間を合計することで、標準時間を合成する方法です。この方法は、毎回観測をせずに標準時間を求めることができるメリットがあります。ただし、事前に細かい作業単位で標準時間を定めておく必要があります。

PTS 法

PTS 法(Predetermined Time Standard System)は、動作を微動作(サーブリッグ)のレベルに分解し、あらかじめ定められた微動作ごとの標準時間を合計する方法です。この方法は、標準時間法と似ていますが、さらに細かい微動作まで分解するのが特徴です。

これらの標準時間の設定法のうち、ストップウォッチ法は直接時間を測定する方法です。残りの方法は、時間を測定せずに、資料から間接的に標準時間を求める方法となっています。