製造業界で近年、ホットな話題として注目されている「スマート工場」。スマート工場への取り組みは世界中で行われています。

そのなかで日本の製造業もスマート工場への取り組みが行われており、それは世界からも注目されています。

スマート工場とは

スマート工場とは、インターネットを接続することで、工場内のセンサーや機器から、得られる膨大な量のデータを分析し、その結果を用いることで、生産性の向上だけでなく、生産工程にとどまらない設計・製造・流通・販売・保守といった製造業のあり方そのものを革新しようとするコンセプトです。

接続するものは機械や設備同士だけでなく、生産に関わるあらゆる人や情報システムをつなげることで、生産性を効率化できるというものです。

スマート工場を実現するには機械・設備にAIやIoTなどを導入することでの現状把握、現状のデータからの分析・課題発見、改善や最適化によって生産体制を整えることが求められます。

リアルタイムで工場の状態がわかるため、柔軟性が高まります。仮にハプニングが発生しても即座に対応ができるようになるため、生産性を向上できるモデルを構築できるようになります。

世界で進むスマート工場化

大きなメリットがあるスマート工場導入の動きは、日本国内だけに限った動きではありません。

世界各国でも同様の動きがみられ、なかでもドイツのインダストリー4.0や中国の中国製造2025などの政策が世界的にも注目を浴びています。

まずドイツと中国の政策がどのようなものかをみていきましょう。

インダストリー4.0

インダストリー4.0とは、ドイツ政府が2011年に公布した戦略的技術政策「High-Tech Strategy 2020 Action Plan(高度技術戦略の2020年に向けた実行計画)」のなかで発表したコンセプトのひとつ。

「相互運用性」「情報の透明性」「技術的アシスト」「分散的意志決定」の4つの設計原則をもっており、機械だけではなく人間やほかの企業資源が、製造や納品などの情報を共有しあうことで、製造プロセスをよりいいものにしていこう、という方針です。

またこの取り組みは生産効率向上だけではなく、既存のバリューチェーンの変革、新しいビジネスモデルの構築をもたらすことも目的としています。このことにより「マス・カスタマイゼーション」の実現といった、さまざまな顧客ニーズへの対応が期待されています。

中国製造2025

中国製造2025とは、ドイツのインダストリー4.0の影響を受け、2015年に発表された「今後10年間の製造業発展計画」を指します。

中国は2049年までの製造業の発展を3段階で計画しており、その第1段階に掲げている「2025年までに世界の製造強国入りを果たす」という目標がこの中国製造2025にあたります。

「イノベーション駆動」「品質優先」「グリーン発展」「構造最適化」「人材本位」の5つを基本方針としており、中国における製造の問題を改善しようという強い意識をもったものになっています。

中国は自国における製造業のレベルや、技術力をもった人材が他国に比べ劣っていることを認識しており、それらを向上していくために、通信設備、軌道交通設備、電力設備、海洋エンジニアリング設備・ハイテク船舶をなどの分野を、世界トップレベルに引き上げなければならないとしています。

スマート工場のメリット

先述したように、IoTを搭載した機械などによってデータを収集し分析をすることで工場の状態を可視化(見える化)し、製造の効率や生産性の向上につなげます。

この可視化(見える化)はスマート工場のメリットのひとつですが、ほかにどのようなメリットがあるのでしょうか。

柔軟な生産対応が可能に

どこかの機械や工場に不備やトラブルが発生したとき、その原因を見つけたり対策をとるため、生産をストップさせることになります。

しかし工場に配置している機械をインターネットで接続しておくと、トラブルが起きても別の機械や工場を代理として稼働させることができます。

他にもそのときの工場の状況に合わせて生産計画を変更することも可能となったり、工場の柔軟な生産対応を目指せます。

設備や人材配置の最適化

「どこにどんな設備を投資するのか」「どんな人材をどこに配置するのか」今まで人の手を介してでしか把握、判断できなかった現状が、IoTなどを導入することで正しく状況を把握したうえで判断することができます。

そうすることでどの設備を新しい設備に入れ替える必要性があるのかが判断できたり、より効率がいい人材配置がわかったりと、製造工程の最適化が期待できます。

人手不足の解消や育成のサポート

今まで人の手で作業していたものをロボットやAIを搭載した機械などに任せることで、同じ時間でも作業量を増やし人材不足を補うことが可能です。

例えば、従業員の一人が音声入力による指示で複数ロボットを動かすことができれば、複数人の従業員の働きが一人の従業員で補うことが可能となります。

また、高い技術をもつ従業員の知識や経験をデータ化することで、その従業員が教育の場にいなくても人材育成に生かすことが可能となります。

またノウハウを体系化することで技術の継承にもつながり、工場の資産にもなるでしょう。

スマート工場を目指すための取り組み

ここまで世界の取り組みやメリットについてご紹介してきましたが、実際にスマート工場を実現するためにはどういった取り組みが必要となるのでしょうか。

データの収集や分析

工場内の設備や人材の稼働状況をデータとして収集し蓄積を行います。データが蓄積していくなかで、例えばトラブルが起きやすい設備や人材の発見といった気づきがあったとします。そうすると「生産性をどのように向上すればいいのか」「どう活用していけばいいのか」といった今後の方針を検討する材料となります。

また、これがメリットのひとつである「可視化(見える化)」につながります。

データの活用

収集や分析によって得られた気づきや発見をIoTやAI技術に合わせることで「トラブルが発生してもすぐに対応できるような設備の制御づくり」といった活用をしていきます。

そのようにさまざまな活用方法を組み合わせていくことで、最適化を進めていき、本来の目的である工場全体の生産性向上につなげていきます。

スマート工場は製造業技術をより高める力を秘めている

スマート工場の実現は、現在製造業がもっている課題を改善する力があります。それは生産性の幅を広げたり、生産性をアップさせたり、高品質を維持できたりなど、多くのメリットを得ながら利益を最大化できることが期待できます。

ただし、スマート工場の導入はさまざまな技術や知識が必要であり、コストも必要になります。

簡単にできることではないものの、スマート工場は大きな可能性を秘めているため、多くの工場がスマート工場化を目指して取り組みを続けています。

もしもIoTの活用によりスマート工場化が進むことで、製造業界は劇的な変化をしていくことになり、国内外からより注目を集めることになるでしょう。