全産業で人手不足

2019年の人口動態統計によると、1人の日本女性が生涯に産む子どもの数にあたる合計特殊出生率は1.36でした。前年から0.06ポイント下がり、4年連続で低下しております。

2030年には、全産業で644万人の人手不足が予想されています。特に深刻な業種として、サービス業や医療・介護分野が挙げられています。

製造業はどうでしょうか?
人手不足は予測されていますが、サービス業の400万人の不足に対して、38万人の不足となっています。サービス業より製造業の方が、人手不足の割合が少ないのはなぜでしょうか?

理由の1つは、製造業における自動化が進んだことです。
「まだまだ、自動車組み立て工程などは、自動化が十分進んでいない」という方もいますが、1990年代と比べると、非常に多くの工程で自動化が実現されています。

自動化の代表として、自動車工場の溶接工程があります。自動車の溶接工程では、全てロボットが溶接作業を行っています。昔は人の手で溶接していた部品もありましたが、今ではありません。また、組み立て工程などでも、工場内の部品搬送は無人搬送車が運んでいます。この30年間で自動化が飛躍的に進んでおります。

もう1つの理由としては、製造メーカーのグローバル化により、製品の地産地消が進んだことです。大手自動車メーカーは、欧州、米国への進出をきっかけに、いわゆるBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)へ生産拠点の移転を進めています。

しかし、国内の生産がなくなったわけではありません。
一時、日本国内に多くの外国人労働者がいましたが、リーマンショックで仕事を失い、ほとんどの外国人が母国に帰りました。その後、生産がもとに戻っても、あの時ほど外国人はいません。

近い未来に製造業では、新たな人手不足問題が再燃すると考えます。そのためにも、製造業では一歩も二歩も踏み込んだ自動化が、今後の課題となります。

生産ライン自動化の課題

今後の自動化の課題について考えてみましょう。

導入コスト

自動化には、高額なコストが必要です。大手企業は、豊富な資金で積極的に導入してきましたが、中小企業にとっては、重大な経営判断を伴います。近年では、産業用ロボットなどに廉価版の製品が増えており、中小企業ではこれらの製品を組み合わせて、賢く自動化を実現しているところもあります。

しかし、自動化が個別最適となっているケースが多く、廉価版製品のため拡張性がないという問題があります。今後さらなる自動化を進めるのであれば、拡張性が必要です。そうなると、廉価版より高機能な製品が必要となり、導入コストは上がります。

完全な自動化

作業者がまったく介在しない、完全な自動化はできているでしょうか?ロボットを近くで監視している人はいないでしょうか?加工はロボットが、部品セットと運搬は人が行っているようなことはないでしょうか?これらの自動化は、完全な自動化とは言えません。

今後さらなる自動化をするのであれば、ロボットを監視することや、部品を運ぶことまで自動で行うことが必要です。

多品種対応

大手企業はもちろん、中小企業でも多品種少量の生産が要求されます。自動化した工程は、多品種少量生産に対応できているでしょうか?今後さらなる自動化をするのであれば、多品種対応を速やかに行える必要があります。

また、多品種対応で設備メーカーのサービスマン待ちという状態はないでしょうか?
速やかに対応できないと、せっかくのビジネスチャンスを逃してしまうかもしれません。

自動化そのものにもまだまだ課題はありますが、自動化を取り巻く環境についても課題があります。

生産ライン自動化における課題解決の戦略と戦術

今後の生産ライン自動化における課題解決の戦略として「工場全体の生産効率を高める、新たな投資」を、戦術として「IoTやAIと連動した自動化システムの構築」を、提案します。

導入コストに関する課題でも述べましたが、これまでの自動化は個別最適なものが多かったと思います。個別最適な自動化とは、工程特有の作業のみを自動化したと言うことです。当然それも立派な自動化ですが、この自動化によって、新たな別の仕事が発生しています。

それは、自動化した設備の保全作業です。自動化で削減した作業と設備保全で純増した作業の差を把握した上で、投資に対する生産性を評価する必要があります。

これから自動化を進める上で、全体最適な投資でなければなりません。全体最適な投資にするためにも、IoTやAIと連携した自動化はかかせません。IoTやAIと連携することで、これまでの個別最適から、全体最適な自動化を実現することができます。

さらに付加価値として、故障予兆管理、リモートメンテナンス、稼働状況管理など、これまで目に見えていなかった情報が見えるようになります。

まとめ

コロナ禍によって、日本だけでなく世界的に新しい生活様式の模索が続いています。新しい生活様式において、インターネットの活用はかかせません。さらに、コロナ禍でサービス業や医療現場で新たな取り組みが行われております。

製造業についても、自動化≒ロボットという模式だけでなく、自動化≒ロボット+IoT+AI+α・・・となって行きます。これまで、自動化と言えば、労働者不足解消のための投資でした。これからの自動化は、人を減らすことだけではなく、より付加価値の高い課題に取り組む人材を育成するための投資となります。

さらに、育成された人材がIoTを活用する人材となるのです。冒頭に述べた新たな人手不足問題とは、情報化された工場をオペレーションするために、高度なIT知識を持った人材が必要となることです。

(画像は写真ACより)

▼外部リンク

パーソル総合研究所 労働市場の未来推計2030
https://rc.persol-group.co.jp/roudou2030/

厚生労働省 外国人雇用対策
https://www.mhlw.go.jp/