ガス組成の変化を約5秒で把握 カラータッチパネルやデジタル通信も採用

横河電機は2026年10月16日、ガスの密度を高速測定する新製品「OpreX Gas Density Meter」を開発し、非防爆仕様の販売を開始した。ガス組成の変化を約5秒で把握できる高速応答に加え、カラータッチパネルやデジタル通信を採用。発電設備をはじめ、再生可能エネルギー、化学、製鉄、石油、ガス・LNGなど幅広い産業での利用を想定する。

国際的な防爆認証システム「IECEx」と欧州市場向けの「ATEX指令」に対応する防爆仕様については、2027年4月末頃の発売を予定している。

「OpreX Gas Density Meter」。左から、ガス密度計検出器GD80、非防爆形ガス密度計変換器GD802G、防爆形ガス密度計変換器GD802S
(画像提供:横河電機株式会社)

ガスの密度から濃度や分子量などを算出

ガス密度計は、ガスの密度によって変化する共振周波数を測定し、密度や比重、分子量、濃度、熱量などを算出する計測機器だ。

横河電機の従来型ガス密度計は1997年の発売以来、電力や石油、製鉄などの産業で採用され、累計出荷台数は6,600台を超えている。

新製品はガス密度の変化を振動によって捉え、ガス組成が変化してから変換器の表示が変化後の値の90%に到達するまで約5秒で応答する。水素と空気、二酸化炭素と水素といった2成分系のガス濃度を一式で測定できる。

タービン発電機では、冷却に使用する水素の純度監視や、設備点検時の置換ガス濃度の監視などへの活用を想定しており、設備構成の簡素化や保守効率の向上につなげる。

タッチパネルとデジタル通信で保守・運用を効率化

操作画面にはカラータッチパネルを採用し、従来機と比べて視認性や操作性を高めた。

通信面ではEthernetとRS-485に対応。各種システムとのデータ連携を容易にし、工場やプラントにおける計測データの活用を支援する。

防爆仕様では、各地域の防爆規格に加えてIECExとATEX指令への対応を予定する。水素やメタンなど可燃性ガスを扱う工場・プラントでの利用地域を広げる狙いだ。

AI・データセンター拡大で電力需要が増加

新製品投入の背景の一つに、世界的な電力需要の拡大がある。

特にAIの普及やクラウドサービスの拡大を背景に、データセンターの電力消費は大きく増えるとみられている。

国際エネルギー機関(IEA)によると、世界のデータセンターによる電力消費量は2024年時点で約415TWhと、世界全体の電力消費量の約1.5%を占めた。IEAの基本シナリオでは、2030年には約945TWhと2024年比で2倍以上に拡大すると予測している。AIがその増加をけん引する主要因の一つとされる。

世界のデータセンターによる電力消費量の推移と見通し(単位:TWh)。2025年までが実績、2026年以降は予測。灰色部分は想定レンジ、緑線は基本ケースを示す。
出典:IEA「Electricity consumption by data centres, 2020-2035」/CC BY 4.0

電力需要が増加すれば、発電設備の安定稼働や保守効率の重要性も高まる。

大型のタービン発電機では、高速回転によって生じる熱を抑えるため水素ガスが冷却に使われる。一方で水素は可燃性を持つため、設備内の水素純度やガス濃度を継続的に把握することが安全運用上重要となる。

米エネルギー省(DOE)の資料では、水素が空気中で可燃性を持つ濃度範囲は体積比で4~75%とされている。こうした特性から、水素を扱う設備では適切な計測・監視が求められる。

水電解設備も拡大、ガス監視の用途広がる

もう一つの市場背景が、水素関連設備の拡大だ。

IEAの「Global Hydrogen Review 2026」によると、世界の水電解設備の導入容量は2025年に前年から倍増し、4GWを超えた。さらに2.5GW以上が建設中で、2026年中の稼働を目指している。

世界の水電解設備の導入容量(単位:GW)。2026年は推計値。
出典:IEA「Electrolyser installed capacity, 2021-2026」/CC BY 4.0

世界の水素需要も2025年に前年比約3%増加して1億トンを超えた。低排出水素に限ると需要は前年比20%増加したとしている。

水電解設備など水素を扱う設備が増えることで、ガス濃度や組成を把握する計測機器の活用機会も広がる可能性がある。

「OpreX Gas Density Meter」では、水電解設備において水素と酸素が意図せず反対側へ混入する「クロスリーク」の監視にも利用できる。

このほか、二酸化炭素と水素からメタンを合成するメタネーションプロセスの監視にも対応する。脱炭素分野で新たな設備投資が進むなか、従来の発電・石油・製鉄分野に加え、水素・再生可能エネルギー分野も重要な用途となりそうだ。

LNGや製鉄、石油精製など幅広い用途を想定

横河電機は、新製品の主な対象市場として、電力、再生可能エネルギー、化学、製鉄、石油、ガス・LNGを挙げる。

タービン発電機における水素純度の監視だけでなく、石油精製時のオフガスの分子量測定、焼鈍炉の水素純度管理、LNGの熱量測定、水電解設備のクロスリーク監視、メタネーションプロセスの監視などへの利用を見込んでいる。


横河電機について

1915年に創立された横河電機は、世界60カ国のグローバルネットワークに17,000人以上の従業員を擁し、YOKOGAWAグループとして、計測、制御、情報の技術を活用して社会課題の解決に貢献しています。主力事業の「制御事業」では、世界に先駆けてプラントの生産設備の制御・運転監視を行う分散形制御システムや自律制御AIなどを提供。エネルギー、化学、素材、医薬・食品などの分野で産業の発展を支えています。

項目内容
業種製造業
本社所在地東京都武蔵野市中町2-9-32
電話番号0422-52-5555
代表者名重野 邦正
上場東証プライム
資本金434億105万円
設立1920年12月
URLhttps://www.yokogawa.co.jp/

関連情報・出典

横河電機株式会社 「ガス密度計の新製品『OpreX Gas Density Meter』を開発・発売」 2026年10月16日 https://www.yokogawa.co.jp/news/press-releases/2026/2026-10-16-ja/

横河電機株式会社 「基本情報・会社概要」 https://www.yokogawa.co.jp/about/yokogawa/company-overview/general-information/

International Energy Agency(IEA) 「Electricity consumption by data centres, 2020-2035」 https://www.iea.org/data-and-statistics/charts/electricity-consumption-by-data-centres-2020-2035

International Energy Agency(IEA) 「Electrolyser installed capacity, 2021-2026」 https://www.iea.org/data-and-statistics/charts/electrolyser-installed-capacity-2021-2026

U.S. Department of Energy(米国エネルギー省) 「Safety, Codes and Standards Basics」 https://www.energy.gov/cmei/fuels/safety-codes-and-standards-basics

「OpreX Gas Density Meter」。左から、ガス密度計検出器GD80、非防爆形ガス密度計変換器GD802G、防爆形ガス密度計変換器GD802S

データセンター電力消費量グラフ

世界のデータセンターによる電力消費量の推移と見通し

出典:IEA「Electricity consumption by data centres, 2020-2035」 Licence:CC BY 4.0

https://www.iea.org/data-and-statistics/charts/electricity-consumption-by-data-centres-2020-2035

水電解設備容量グラフ

世界の水電解設備容量の推移

出典:IEA「Electrolyser installed capacity, 2021-2026」 Licence:CC BY 4.0 ※2026年は推計値

https://www.iea.org/data-and-statistics/charts/electrolyser-installed-capacity-2021-2026