宮園電子株式会社は、創業以来約40年にわたりものづくりを支えてきた企業です。遊技機関連事業を軸に成長した後、時代の変遷に合わせた中国拠点の立ち上げや自動車分野への参入などを経て、現在はハーネス加工を中心とした製造を展開しています。本記事ではDX推進をテーマに、代表取締役の宮園貴裕氏に、その背景や現場の変化についてお話を伺いました。 

代表取締役 宮園 貴裕 / Takahiro Miyazono 

埼玉県ふじみ野市出身。 大学卒業後、商社系列のスポーツ施設に入社。 インストラクター、マネジメント業務を経て2000年より父親が創業した宮園電子(株) へ転職。営業職に従事し中国工場の立ち上げ等 に着手、2013年より現職。主業のワイヤーハーネスとオゾン発生装置の開発に励む。 

    「このままでは何も残らない」危機感からの出発 

    ― DXを進めようとしたきっかけは何ですか。 

    2024年に社長就任10年を振り返ったときに、「全く将来性が感じられない会社にしてしまったのではないか」という自責の念を抱いたことがきっかけです。これまでにも生産性向上を掲げてきたものの、十分な成果にはつながっていませんでした。作業自体はできているのにそのやり方が会社のノウハウとして残っておらず、人に依存している状態でした。このままでは、従業員たちは与えられた図面を見て作るだけで終わってしまい、長年蓄積してきたはずの経験が会社のノウハウへと還元されないという危機感がありました。こうした課題意識から、従来の紙の作業指示書を電子媒体へ移行し、作業手順を可視化・標準化のためのDX推進に取り組み始めました。 

    宮園電子株式会社 スタッフ一同の集合写真
    提供:宮園電子株式会社

    数千製品と現場負担が生んだ壁 

    ― DX推進におけるボトルネックは何でしたか。 

    当社が取り扱う製品は数千以上あり、そのすべてを電子化する必要があるため、電子化に必要な労力と変更に対応していく作業者の負担は当初から大きな懸念でした。実際にシステム担当を務め、この変更作業に携わった社員が途方に暮れていたのも事実でした。 

    また、生産方法を変更することになるので、製造や検査の作業者にとっては従来の慣れた作業内容が全く別の作業にリセットされたような、錯覚とやりづらさを感じていたと思います。 

    この背景には出来上がりが同じであれば問題ないという考え方が強く根付いており、作業のやり方は個人に任されていたことにあると考えています。標準化を進めること自体が、現場にとっては大きな変化でありボトルネックとなりました。こうした背景から、DXは単なるシステムの導入ではなく、「現場のやり方や意識を変える取り組み」としても進めています。 

    DXを実施した作業場所
    ©工場経営ニュース

    完成度を求めない運用と優先順位付け 

    ― ボトルネック解消のために工夫した点は何ですか。 

    標準化を進める作業の中でも特にボトルネックとなったのが承認フローでした。現場で使用する前に、電子化した内容を管理者が確認・承認する必要があり、この作業が全体の流れを滞らせていたのです。 

    そこで最初から100%の完成度を求めず、現場で使用しながら修正していく“ランニングチェンジ”に切り替えました。さらに、すべてを一度に進めるのではなく、受注品の中から優先順位を決めたことで、漠然としていた作業が整理され、進捗が大きく改善しました。 

    こうした完璧を求めない運用と段階的な導入が、停滞を乗り越えるポイントになったと思います。 

    実際の現場の風景
    ©工場経営ニュース

    数値化と標準化がもたらした変化 

    ― DX導入後、どのようなメリットを実感していますか。 

    工数管理の面で、実際の作業時間を感覚ではなく数字として把握できるようになったことが大きな成果です。これにより、従来は見えなかった作業の実態が明らかになりました。単独作業やペア作業において、作業者の力量の違いも把握できるようになり、作業者の能力を測る際の指標として活用できています。 

    また、現場にも変化があり、作業の標準化が進んだことで、個人の解釈によるバラつきが減少しました。作業手順をデータとして残すことで、教育の効率化や品質の安定にもつながっています。DXの効果は単なる効率化にとどまらず、会社としての基盤強化にもつながっていると感じています。 

    標準化された作業
    ©工場経営ニュース

    DXは「修正と定着」のその先に 

    ― 効果はどのくらいの期間で現れましたか。 

    DXを推進してから3ヶ月ほどで工数データが揃い、作業時間が明確に見えるようになりました。工数データがハイスピードで集計できた一方で、実際に作業の標準化や、それに伴う会社の基盤強化を実感できたのはさらに1年後くらいでした。段階的な導入を進める中で集計エラーなどのミスが発生し、その都度修正を重ねていったためです。完璧を求めすぎず、まず動かしてみることを優先した結果です。 

    DXによる業務改善は、一朝一夕で実現できるものではありません。地道な改善の積み重ねこそが、着実な成果につながると実感しています。 
    ローマは一日にして成らず、完成にはまだ時間が必要です。 

    ペーパーレスが実現された作業現場
    ©工場経営ニュース

    AIによる生産計画へ──属人化解消への次なる挑戦 

    ― 今後取り組んでいきたい課題や、DXによって目指している姿を教えてください。 

    今後は工数管理のデータをもとに、受注から納品までの生産計画をAIで自動化できる仕組みを構築していきたいと考えています。 
    すでに工数の可視化を進めてきたものの、生産計画の策定については依然として担当社員の経験や技量に委ねられているのが実情です。そのため、なぜこの順番で生産しているのかといった根拠が明確に可視化できていません。 

    こうした属人化は、日々の現場運営にも影響を及ぼしています。特に作業者のシフト作成においては、工程ごとの負荷や人員配置を正確に把握するのが難しく、どうしても現場担当者の勘や経験に頼った調整になってしまいます。 

    その結果、担当者ごとに判断のばらつきが生まれ、負担も集中しやすい状況となっていました。こうした課題を解決するため、工数データをもとにAIによる生産計画の最適化を目指しています。 

    最後に

    宮園電子のDXは、「自責の念」を出発点に、現場の標準化とデータ活用を目指した取り組みでした。特に、最初から完成度を求めず運用しながら改善する姿勢や、優先順位を明確にして段階的に進めた点は、中小製造業にとって実践しやすい一例だといえます。宮園社長へのインタビューを通じ、DXは一度の導入で完結するものではなく、継続的な改善の積み重ねによって初めて価値を生むことがわかりました。 

    宮園電子株式会社

    コーポレートサイト https://mdenshi.co.jp/ 
    代表者 宮園 貴裕 
    設立 1984年2月 
    資本金 2000万円 
    本社 〒356-0051 
    埼玉県ふじみ野市亀久保1720-4 
    事業内容 ワイヤーハーネス及び機構部品の製造販売 
    許可・認証 ISO9001(JISQ9001:2015)本社取得  IATF16949(中国拠点)  UL認証(ワイヤーハーネス)