社会が大きな変革の時代を迎えている今、新規事業は大手企業やスタートアップ企業だけのチャンスではありません。規模の大きな新規事業は、その事業や目標を実現させるために多くのステークホルダーが参画しています。その中には、優れた技術を持った中小企業(製造業)も含まれています。

この記事では、前回に引き続き株式会社メタモルフォーシスの岩崎社長にインタビューを行い、今話題の「脱炭素・GX」分野に関する新規事業について、株式会社カーボントレードが取り組む具体的な事例をご紹介します。国が今どのようなことに興味を持っているのか、またそれがどのように官民共同で実現されていくのかをまとめましたので、ぜひ最後までご覧ください。

株式会社メタモルフォーシス・岩崎 桃子の経歴

新規事業立ち上げから、政府案件までを手掛けるオールラウンダーなコンサルタント。​日興アセットマネジメントにて内部監査、KPMG、グラントソントンで移転価格税制のコンサルタントに従事。その後Mode-Innovations(英)の日本法人社長を務め独立。

2019年パルシファル設立、2020年短期議員秘書としてIT戦略の旗振り、その後コンサルタントとしてMS&ADインターリスク総研の新規事業に参画。2023年インターフュージョン・コンサルティングに入社、グループ子会社である(株)メタモルフォーシスの代表取締役。​

株式会社Metamorphosis代表取締役の岩崎桃子氏(左)と
株式会社カーボントレード代表取締役の建石俊之氏(右)

今、国が目指している「脱炭素」の取り組み

ーー国が取り組んでいる脱炭素関連での新規事業についてお尋ねします。はじめに、現在の国動向や脱炭素技術における課題を教えてください。

岸田政権が 「GX移行債として20兆円を発行する」 と表明するなど、GXへの意識を高める動きが活発化していましたが、10月11日、東証で正式にカーボン・クレジット市場がスタートしました。国が掲げる2050年のカーボンニュートラル、2030年度の温室効果ガス排出量46%削減に向けて、経産省として成長志向型カーボンプライシング構想を一つ実現させた形ですが、欧州開設は2005年で、約20年遅れのスタートになります。市場取引にすることで、排出削減分の透明性を確保し、脱炭素に対する企業意識を引き上げることが期待されています。 

「民間企業のGX(グリーントランスフォーメーション)投資を引き出す上で大変有効な取り組みである」「排出削減を先行する企業ほど負担が少なくなる仕組みを目指す」と西村経済大臣はコメントしていますが、カーボンクレジット自体の創出量が少ないのですから、2026年の本格稼働に向けて脱炭素系の技術躍進を多方面から後押しする動きも活発化しています。 

またGX移行債についてですが、日本は火力発電への依存度が他の主要国より高いため、海外では一般的である環境債(グリーンボンド)ではなくG X移行債(トランジションボンド)を主軸とすることは妥当です。移行債で調達された資金を何に投資していくのかという議論はあるのですが、移行債による財源確保により投資を先行させる方向への舵きりは、脱炭素技術を加速させることに違いありませんから、新しい脱炭素技術で勝負をしていく企業、ベンチャーにとっては追い風です。 

しかしカーボンオフセット技術の一番の課題は、その技術の正確性(削減量)の担保、また持続可能性にあります。国内でもさまざまな技術が開発されたという発表はあるものの、そうした技術が実際に経済効果になかなか結びついていない、いわば過渡期であるという印象を持っています。 
国としては、カーボンニュートラルを達成できる純国産の技術を見つけるため、関係省庁が支援の規模を拡充していますが、なかなか革新的な技術は生まれていないという現状です。 

脱炭素技術に取り組む事例

ーー実際に岩崎社長がご支援されている、脱炭素関係の事業について教えてください。

現在支援している会社の一つに、株式会社カーボントレードという会社があります。この会社はもともと環境系コンサルティング事業や、再生可能エネルギービジネスを行っていましたが、2008年からJ-クレジットなどのカーボンオフセットブローカーとしての取引を行い、排出権販売証明の発行実績が業界1位の実績を持っています。技術開発にも力を入れており、大変ユニークで、類を見ない新技術を常にお持ちなのですが、現在は低温プラズマの技術を用いた技術開発に注力されています。

会社概要

株式会社カーボントレード

コーポレートサイトhttps://carbontrade.co.jp
代表取締役建石 俊之
設立2008年12月22日
資本金4,000万円
本社〒107-東京都港区赤坂3-21-20 赤坂ロングビーチビル 4F
事業内容カーボン・クレジット売買・仲介、再生可能エネルギー電力証明書、
カーボン・オフセットPLASMA Products、ROS Products、AQRSS Solution、
建築物省エネ計算(ZEB、ZEH-M)

カーボントレード社の低温プラズマ技術

  • 大気圧低温プラズマとは?
  • CT方式による大気圧低温プラズマ生成
  • カーボントレード面プラズマの均一性
  • CT方式は、様々な形でプラズマ発生可能

この低温プラズマ技術ですが、同社はプラズマを点ではなく面で安定して発生させる技術で、さまざまな開発を行なっています。消費電力が少なく、非常に低コストで大量のプラズマを発生する事ができる技術です。この技術を活用し、大気中のCO2を分解して吸収、固定化へ結びつけることができるDAC技術(ダイレクトエアキャプチャー)の開発を行なっています。同社の低温プラズマ技術では、CO2の吸収以外に大きく分けて以下のようなことが実現できます。 

  1. AIR:空気を低温プラズマ処理し、殺菌、ウイルスの不活性化、消臭効果のあるCHEFER AIR の生成
  2. WATER:生成されたプラズマCHEFER AIRをミゥに浸透させた CHEFER WATERの生成 

二酸化炭素の吸収、固定化技術は、まさに脱炭素の技術ですが、私がカーボン・トレード社からPXのご紹介を頂いた当初2022年から、吸収量、消費電力量等の精度は高く、その後COP27でも、欧州はじめ外国からかなりの好評価でした。  

WATER及びAIRの基礎技術については、既に開発に成功し、社会実装が進んでいます。特にAIRについては、まだまだロット数が少ないものの商品化がされており、官公庁や医療機関などへの納品実績があります。また農水省支援で、プラズマ水を使用したリンゴを日本初インドへ輸出する実証なども行い、非常に有効な結果が出ていることから、フード分野でも実装が進んでいます。 

そのように低温プラズマ技術はとても汎用性の高い技術で、今後さまざまなシーンでの活用が期待されています。現在は大手電気メーカーとの事業連携を視野に協議をしています。また今後の技術開発費、低温プラズマに詳しい技術者を育てるため、資金調達も支援しています。 

こうした純国産の新技術を今後支えていく為に、技術者を積極的に育成していきたいという企業の姿勢はとても大切なことで、技術開発系のベンチャーさんであれば、日本としての技術力の底上げを目指すNEDOのディープテック支援などを積極的に活用するのも良いかと思います。 

今後は技術をビジネスとして成立させることが課題に

ーー岩崎社長はカーボントレード社にてどのような支援をされているのでしょうか。また、同社は今後どのようなことに取り組んでいくのでしょうか。

私は同社の技術をビジネス化するための支援を行っており、先ほども申しましたが、現在は大手電機メーカーとのアライアンスを求めて、シナジーを協議しています。また、汎用性の高いAIR、WATERの技術は、目的に合わせそれぞれ厚労省、経産省等の担当部署と面談を重ね、一つ一つ問題をクリアにしていき、事業化への足固めを行っています。積極的に省庁へ働きかけることで、経産業省の技術者が視察に訪れるなど、国にとって必要な技術としてバックアップするべきだという議論が深まってきている状態です。 

今後は大手企業とのシナジーの面で、どの辺に落とし込むかの結果で支援の形態は変わってくると思いますが、資金調達やロードマップの作成、適切な企業や政府関係者とのネットワークサポート、ステークホルダーとの協議、生産体制の構築等、多方面に取り組んでいくことになります。私はマーケティング専門家ではないため、各分野のプロに横展開することで整理して戦略を立てていかなければいけないと考えています。カーボントレード社の想いや意思も汲みながら、総合的に必要な支援を行うため、フットワークを軽くし、状況をオープンにすることでスピード早く取り組んでいきます。 

新規事業は熱意だけでなく、丁寧な対応ができる企業と協業したい

ーー今後岩崎社長が調達先を考えていくうえで、中小企業や製造業が関わっている部分はありますか。また、どんな企業に新規事業を一緒に取り組んでほしいと考えますか。

私がカーボン・トレード社の支援に参画した当初、製造に際して製造工場をご紹介させていただくこともありました。モビリティ部品を設計・製造する企業ですが、老舗なので高度な技術・知見を有しているのはもちろんのこと、「これまで取り組んできたことが頭打ちになるから新しいものに乗りたい、日本の技術者としていいものを作り続けていきたい」という強い熱意がありました。工場見学や打合わせでも、設備の充実、高い技術者とのやり取りのなかで、我々としても目から鱗のことも多く教えて頂きました。非常に丁寧な説明があり、「ここまでやってみせます」という社長はじめ、技術者の熱意が高かった。カーボン社としてぜひ一緒にやっていこうとの判断に至ったのは、私としても大変嬉しく、これからが楽しみです。

これまでも老舗の中小企業と、最先端技術を開発したベンチャーのマッチングを行ってきましたが、中小企業は素晴らしい製造技術と現状を変えたいという熱意はあるものの、プレゼンに関してはおおいに改善が必要という印象を持っています。資料を作り込んでこなかったり、プレゼンテーションに消極的だったり、また 「これまでの実績を信用してください」 というお話になるケースが見られます。

ベンチャーや新規事業では、若い技術者も多く参画しており、全く新しいことに挑戦するため、過去の実績にあぐらをかいたような態度は認められません。折角のマッチングの機会を活かせません。製造業を営む中小企業は、折角長年に培って日本のエンジニアリングを支えてきた高い技術があるのに、今、自分たちが何を提供できるのか、何に的を絞っていいかわからないのではないでしょうか。その場合、前回(Link)お話ししたように、源流で何が行われているか(=国や大手企業の動向)をもっと積極的に把握されるべきだと思います。そのお手伝いもしたいですね。また、個人的にはディープテックが好きなので、革新的な技術が大きく羽ばたくお手伝いができるように、大手とお繋ぎしたり、ブラッシュアップするお手伝いが今後もできるように精進したいと思っています。

最後に

今回は、全2回に渡って株式会社メタモルフォーシスの岩崎社長にお話を伺いました。株式会社メタモルフォーシスでは、新規事業のタネや技術に自信がある企業さま、または実現したい強い想いがある企業さまからの相談を受け付けております。ご相談を希望される方は下記より、当社までご連絡ください。当社より株式会社メタモルフォーシスへお繋ぎいたします。


会社紹介

株式会社Metamorphosis

本社:〒108-0014 東京都港区芝4-13-4 田町第16藤島ビルhttps://www.metamorphosis.jp/%E4%BC%9A%E7%A4%BE%E6%A6%82%E8%A6%81/

(親会社)株式会社インターフュージョン・コンサルティング

〒108-0014 東京都港区芝4-13-4 田町第16藤島ビル
https://www.interfusion.jp/

親会社である株式会社インターフュージョン・コンサルティングの奥井会長が、オクイアンドアソシエイツから独立。省庁(防衛省、財務省、厚労省など)またはレジェンド企業をクライアントとし、党の派閥から国会にあげる案件の案件づくり等も引き受けている。
省庁の案件作りの実績及びIT関係企業を束ねてきた経歴、またデータ系の一般社団法人を束ねている実績があったため、政策系デジタル系で一番のコンサルティング会社に。
株式会社Metamorphosisは、親会社同様政府案件を扱うものの、ベンチャー企業に特化したコンサルティング会社である。

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