株式会社サカモトは、木製建具(ドアなど)の製造を手がけるものづくり企業です。かつてはマンション向けの大量生産を担っていましたが、現在は地域資源である西川材(埼玉県産材スギ・ヒノキ)をはじめとする天然木を活用したオーダーメイド製品へと舵を切っています。本記事では、「職人技と機械のハイブリッド経営」をテーマに、同社がどのように地域資源と向き合い、事業転換を実現してきたのか、代表取締役の坂本幸氏にお話しを伺いました。 

代表取締役 坂本 幸 / Sakamoto Yuki 

株式会社サカモト   代表取締役社長 坂本 幸
1975年 埼玉県生まれ
跡見学園女子大学文学部美学美術史学科
を卒業後、
1999年にサカモト入社、2023年から現職。

    地域資源「西川材」との出会いが転機に

    ―貴社は現在、オリジナル製品やオーダーメイド建具と家具の製造を中心にされていますが、創業当初からの事業なのでしょうか。

    もともとは、マンション向けに木目が印刷された化粧板の扉を大量生産する事業が中心でした。デベロッパーやゼネコンから受注した物件ごとに仕様が決まっており、一定の品質で大量に供給することが求められるビジネスモデルで、売上規模は大きかった一方で、同業他社との競争も激しく、価格に左右されやすい側面がありました。

    そのため、案件ごとに利益が圧迫される場面も多く、安定した収益を確保するには課題がありました。こうした背景から、付加価値の高い製品づくりへの転換を模索するようになりました。

    ——地域資源である西川材を使おうと考えたきっかけはあるのでしょうか。

    2007年頃に展示会で地元の材木業者と出会い、地元で古くから大切に育てられた西川材(杉・ヒノキ)の魅力に強く惹かれたことが転機となりました。実際に触れてみると、見た目は同じように見える扉でも、天然木は手触りや香りの部分でまったく違いました。その魅力に引き込まれ、「この素材を使って何か作りたい」と思ったのが最初です。

    さらに、木材業界の衰退や林業の課題を知る中で、「自社が製品として木材を活用することで地域に貢献できるのではないか」という使命感が芽生えました。その後、地域材を活用した住宅を扱う工務店との取引を開拓し、現在では大手デベロッパーとも直接取引を行うなど、事業領域を広げています。また時代の流れとともに、環境配慮やトレーサビリティが重視されるようになり、追い風を受けています。

    飯能の名産杉・桧「西川材」
    提供:株式会社サカモト

    オーダーメイドで実現する差別化と価格競争の回避

    ——素材へのこだわりは事業内容の転換点でもあったそうですが、こだわりと事業性の両立についてどのような工夫をされていますか。

    現在は、規格品の大量生産ではなく、オーダーメイドの製造を中心にしています。お客様の要望をひとつひとつ丁寧に聞きながら製品を作っていくことで、単純な価格比較ではなく、「この会社にお願いしたい」と思っていただける関係を築くことができています。

    一方で、受注の波があるという課題もあります。その対策として、オリジナル商品や企画商品を開発し、新規顧客の開拓につなげています。かつての大量生産では同じ仕様で価格競争に巻き込まれていたのに対し、現在は顧客ごとに価値を提供できる構造へと転換しています。結果として、単なるコスト勝負ではなく、付加価値で選ばれるビジネスモデルを確立しています

    オーダードア・建具 施工例 杉戸・障子
    提供:株式会社サカモト

    職人技と機械が生み出す付加価値の仕組み

    ―高付加価値のビジネスモデルを支えている技術や会社の体制について教えてください。

    西川材を用いた事業に新たに取り組むことで、経済産業省の地域資源活用事業に採択され、オリジナル製品の開発や、コンピューター制御の立体木工加工機などをはじめとした機械群の導入が実現しました。

    これによって、手加工していた職人の作業の一部を代替することができ、精度の向上や生産性の上昇につながりました。

    ただ、もともと職人集団ということもあり、基本は木材のカットや穴加工については機械を用いて、最終的なお客様が手に触れる表面などの最終的な仕上げは職人技に任せています。そのほかにも日本の伝統的な和の建具製品などでは一から職人が手作業で作っています。

    従来からの職人技と最先端の機械が付加価値を生み出しています。

    コンピューター制御の立体木工加工機
    ©工場経営ニュース

    事業転換がもたらした成果と組織変革

    ——地域資源活用やオーダーメイド品への事業転換とそれに伴う機械化による成果や、生じた課題について教えてください。
     

    大きな変化は、売上よりも利益率の部分に表れています。以前は、売上は多かったものの、薄利多売の状態でした。現在は、売上自体は当時よりも少ないですが、付加価値の高い製品を扱うことで、利益率は年々改善しています。また、顧客との距離も近くなり、完成後に直接喜びの声をもらえるようになった点も大きな変化です。

    一方で、課題は組織面にもありました。従来は工程ごとに担当者が固定されていたため、機械導入後の人材ローテーションには苦労がありました。しかし現在では複数工程を扱える体制へと改善し、柔軟な生産が可能になっています。

    また、こうした組織変化の背景には、事業転換の過程での現場の負担や戸惑いもありました。初期段階で新旧の事業を並行する中で負荷は大きかったものの、小ロットでも利益を確保できる実績を積み重ねることで、徐々に社内の理解が進んでいき、組織まとめあげることができました。結果として、既存の強みを活かしながら新たな事業へ移行する体制が整っていきました。

    現場の作業風景
    ©工場経営ニュース

    新規事業とこれからのものづくり

    ——今後の展望について教えてください。

    近年の日本では、人口や住宅着工数の減少といった外部環境の変化がありますので、ドアや家具だけに依存しない事業展開が必要だと考えています。そのため、自社の加工技術を活かし、建具以外の製品開発にも取り組んでいます。

    たとえば、木材を組して壁だけで構造を成立させる新工法の開発など、技術の応用範囲を広げています。この工法は柱や梁を用いず、薄い木材を積み重ねることで建物を支える仕組みで、内部に柱のない大空間を実現できる点が特徴です。

    また、若手人材の採用・育成にも力を入れており、「ものづくりの魅力を感じて長く働ける環境づくり」を目標に掲げています。機械と職人技を融合させた独自の強みを活かしながら、新たな市場への挑戦を続けていきたいです。

    会社全体で取り組むモノづくり
    ©工場経営ニュース

    最後に

    西川材との出会いをきっかけに、同社は大量生産からオーダーメイドへと大きく舵を切りました。機械と職人技を融合させることで生産性と品質を両立し、付加価値の高いものづくりを実現しています。変化の過程では多くの課題もありましたが、強みを活かした段階的な転換により、新たな競争力と持続的な成長基盤を築いています。

    株式会社サカモト

    コーポレートサイトhttps://eco-sakamoto.co.jp/
    代表者坂本 幸
    設立1966年(昭和41年)3月11日
    資本金2,000万円
    本社〒357-0031 -埼玉県飯能市山手町25番21号
    事業内容建具製造業木製建具工事オリジナル製品の製造・販売オーダー製品の製造・販売
    許可・認証許可番号 埼玉県知事 許可(般-4)第 4138号
    建設業の種類 建具工事業 内装仕上工事業 埼玉県「彩の国工場」指定(平成20年) SGEC(緑の循環認証)のCoC認証を取得(平成30年)