「選ばれる会社になる」。この「選ばれる」には、お客様だけではなく求職者や従業員から選ばれるという意味も強くあります。人材不足が叫ばれる近年、企業が人材を獲得するための施策として「採用広報」が注目されつつあります。

今回は、1年で30名もの従業員を採用された事例をご紹介します。採用広報を支援されている株式会社hypexの河合社長と、その支援先である手島精管株式会社の手島社長に、採用広報に取り組んだ成果や選ばれる企業になるために必要だと思うことについて伺いました。

株式会社hypex 代表取締役 河合 幸太 / Kota Kawai

株式会社アラン・プロダクツへインターン入社。会社が売却された後、月間150万利用者数を超える医療・美容のWebサービスの事業責任者、兼経営陣として組織の成長を牽引。成長組織におけるOKRを利用した評価制度の構築や外国人、ジェネレーション、女性、LGBTQ+などのダイバーシティ・マネジメントに尽力。新規事業の立ち上げに従事したのち、株式会社hypexを創業。グラナダ大学マーケティング学部、立命館大学国際関係学部卒業。

手島精管株式会社 代表取締役 手島 由紀子/Yukiko Teshima

1996年に渡米し、ESLにて英語を学んだあと、Northeastern Universityにてビジネスの基礎を学ぶ。 2002年に手島精管株式会社に入社。7年間の現場改革を経て、より深いグローバル経営の知識を得るために2008年に再渡米し、HULT IBSに入学し、翌年MBAを取得。帰国後、2014年に代表取締役社長に就任し、数々の組織改革を行う。2017年には、地域未来牽引企業に選定され、2020年には中小企業庁「新しい担い手研究会」(中小スタートアップ企業の在り方を考える会)に参画し、社内だけでなく幅広く活動している。

採用広報は、自社をアピールして求職者に選んでもらうために行う

――採用広報とはなんでしょうか?サービス・プロダクト広報の違いを含めて教えてください。

(河合)
広報・PR(パブリックリレーションズ)は、社会とコミュニケーションを取るマーケティングの1つだと思います。サービス・プロダクト広報は、目的が自社の製品販売やサービス販売であることが特徴です。広報という形で自社の製品を購入する方々や、潜在層に向けて中長期的な発信をしていくことが多いと思います。

一方で、採用広報は目的が採用になるため、自社の製品を買う方ではなく自社で働きたい方に向けて発信していきます。例えばイメージ戦略・ブランディング戦略として、職場としての会社のイメージが良くなるような発信をすること、などがあります。

採用広報が日本でかなり重視されてきたのは近年のことです。
理由は労働力人口の減少が大きいでしょう。例えば2023年の新卒求職者は2022年より3%減少しています。私は今29歳ですが、自分の生まれた年と比較して2022年は40%程度減少しています。若手比率の急速な低下が起こっています。そのため以前の採用市場は買い手市場でいたが、現在は売り手市場となり企業が人材を選ぶ以上に、人が企業を選ぶ状態になっています。そういった背景があり、自社をアピールしないと採用できなくなってきました。    

“大量退職”から立ち直るために取り組んだこと

――手島精管株式会社で採用広報に取り組み始めた理由を教えてください。

(手島)
昨年から今年にかけて(2022年~2023年)、弊社がハラスメントを受けてしまい、50人いた社員が半減してしまいました。もちろん業績も半減しました。

「地方にある町工場を、私がグローバル企業にする!」という想いがあり、様々なことを積極的に先進的取り組み、変えるべきところは変えていきました。働き方改革、環境に即した設備の開発、さらにマネジメントを強化していきました。そうこうするうちに、一部の方々と摩擦が生じて嫌がらせを受けてしまったと考えております。    

――採用広報としてはどのような施策を行いましたか?

(手島)
はじめになぜ人が減ってしまったのか、求人しても入ってこない理由を分析しました。調査を進めて行くうちに、実はインターネット上で、弊社や私に対するネガティブな投稿を書かれていたことがわかりました。そこで専門の弁護士にお願いし、事実無根なインターネット投稿の削除を行いました。

(河合)
その後、弊社が手島精管さんの”本質的な魅力”を適切に伝え採用力を上げる協力をさせていただきました。大きく分けて2つの施策を行いました。1つ目は応募を増やすこと、2つ目が応募からの採用率を上げていくことです。

応募増加施策は、見せ方と流入に別れます。候補者から見た会社のイメージを適切にコントロールできるように表現することと、流入と応募効果の最大化です。
見せ方の部分では、主に採用コンテンツを改善していきました。採用候補者の方は、採用ページを見る人が80%以上、さらに応募者のおよそ1/4はSNSを見ています。つまり、採用候補者はリアルな情報を求めるようになってきています。時代に合わせ、「なぜ今この製品が求められているか」や「ものづくりの繊細な技術がいかに世界で必要とされているか」が伝わるようなサイト、SNS、動画を作成しました。

それらのコンテンツへの流入手段として、広告出稿も実施いたしました。本社のある群馬県館林市と周辺の市をターゲティングし、その範囲で有効な認知を獲得するという施策を行いました。地方は、東京と比較するとどんなに会社の魅力があっても、働くためにわざわざ引っ越してくる方はどうしても少なくなってしまいます。そのため通勤圏内の在住者のみをターゲットとして、Facebook、Instagram、LINEなどの地域ターゲティングができる媒体に広告を出稿しました。    

応募が獲得できたところからは入社率の最大化です。手島社長とオペレーションの連携や応募からのフローの改善を行いました。採用は意外とシンプルで、応募してくださった方は基本的には「働きたい」と思ってくれています。その気持ちをなるべく下げないように、温かいうちに対応していくことが必要になるので、それが実行できる体制を整えました。各求人媒体の担当の代理店の方とも協力し、チーム一丸となって最高のオペレーションを作ることに取り組んできました。

採用広報で、ランチタイムに笑い声が聞こえる会社に

――様々な施策を行った結果、どのような成果が出たのでしょうか?

(手島)
まずは従業員数が20名から50名まで戻ってきました。一時期は20人しかいなかったので、駐車場がガラガラでした。最悪の時には、10人以下の時もありました。オフィスも私1人だったので、来客があると私がインターフォンを取ったりしていたのですが、今は駐車場も埋まり、オフィススタッフもいるので本当ににぎやかになったなと感じます。何よりもランチタイムに笑い声が聞こえる。これがいいですね。
昔を知っているので、初代の頃からの転換期を超えてようやく2代目のカラーになったと思うのですが、コーポレートカルチャーとしては完全ホワイトだなと自負しています。

選ばれる会社になるためには「求められることに応える」ことが大切

――最後に、選ばれる企業になるために、企業はどんな取り組みが必要だと思いますか?

(河合)
弊社がお手伝いしている会社で、実際に選ばれている会社と難しかった会社を比較してお話させていただく形になりますが、社会のために意義のあることをしている会社が選ばれる傾向が強いです。
冒頭お話したように、現在は完全に売り手市場なので、働こうと思っても本当に職がない方は少なくなっています。それこそ出費自体が少なくなり、アルバイトなどでも、豊かな生活を送っている方は多いです。求人が豊富な中で選ばれるためには+αのところで、社会に対する思いや貢献などが伝わってくる会社が選ばれるのかなと思います。

また、入社する人に「何かを求める会社」は選ばれる会社になっていると思います。売り手市場になると要求しない会社が多くなります。要求しない会社とは、要するに入社する人がお客様状態になってしまっている状態のことで、採用するためにハードルを下げ我慢してしまうような状態です。そのような施策は、短期的には応募は増えますし、社員も求められなくて楽になります。しかし、社員のことを本当に考えて、その人が5年後とか10年後、変化する社会の中で何かできるかを考えてしっかり求めないと、会社のためにも個人のためにもなりません。
ホワイト化することや福利厚生を充実させることも非常に重要ですが、その分会社として適切に期待して、働く人が期待されていることが重要なのではないかと思っています。こんな時代だからこそ、しっかり向き合う会社ほど選ばれます。    

(手島)
選ばれる会社になるためには、視野を広く持ち時代に少しは合わせるということが必要なのではないかと思います。例えば、若者を獲得したいっていうことであれば、若者が何を求めているのかを考えて、そのニーズに合ったものを導入することが必要です。弊社でもランチフリーや子育てサポートなど、求められていることには応えるようにしています。マーケティングの一環で、求められているニーズがあるところに、手を差し伸べるということが、選ばれる理由になのではないかなと思います。

私たちも私たちでまだ課題はあります。選んでこの会社に入ってくれた皆さんに、長く勤務して頂きたいので、一歩踏み込んだ組織作りや人材育成を課題とし、ステークホルダーへ幸福の還元を実現したいと思っております。    

さいごに

今回は株式会社hypexの河合社長と、その支援先である手島精管株式会社の手島社長に、採用広報に取り組んだ成果や選ばれる企業になるために必要だと思うことについて伺いました。
株式会社hypexでは、採用広報に関するご支援を伴走型で行っています。採用資料の作成や採用のための企業ブランディングなどをご支援しています。

また、手島精管株式会社では引き続き、従業員の採用を行なっています。
詳細については下記よりご覧ください。


株式会社hypex

コーポレートサイトhttps://hypex.jp
代表者河合 幸太
設立2019年12月5日
資本金7,500,000円
本社東京都渋谷区渋谷3-26-16 第五叶ビル5F
事業内容採用広報伴走支援

手島精管株式会社

コーポレートサイトhttps://teshima.co.jp
代表者手島 由紀子
設立1972年9月
資本金20,000,000円(1985年10月1日現在)
本社群馬県館林市下早川田町306-1
事業内容ステンレスチューブ製造
免許・認証noharm®認証
ISO認証(ISO9001)
群馬県いきいきGカンパニー認証
金属細管の製造方法の特許(日本・韓国・中国)